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なんとか間に合わせた
2015年6月19日に開催された国際バスケットボール連盟(FIBA)のエグゼクティブコミッティーにおいて、日本に科されていた『国際資格停止』の処分について審議された。今後の国内外での国際試合等の活動を認めること、8月に日本で開催されるFIBAセントラルボードにて資格停止解除可否の正式決定を行うことが承認された。
この段階では正式承認ではないが、事実上『国際資格停止』は解除されたのだ。
1月にスタートしたタスクフォース会議において以下のことが中心に議論の中心となった、日本バスケットボール協会(JBA)のガバナンス強化と日本代表チームの強化、ミニバスケットボールのルール改正。そして男子プロリーグの統一問題。これらの諸問題に対し、『豪腕』は解決の道を探ったのである。
日本バスケットボール協会(JBA)のガバナンス強化
今回の一連の流れの中で、表向きには『男子プロリーグの統一問題』が一番大きな問題に見える。しかし、この問題も含め日本バスケットボール協会(JBA)のガバナンスがきちんとできていればここまで落ちることはなかった。
いくらリーグ問題が解決したからといって、その場しのぎの形での解決にしかならないからだ。
改めてFIBAが求めるJBAのガバナンスとは、
(1)傘化団体を強力に統括するリーダーシップを有する組織であること
(2)スピーディーな意思決定を可能とする組織であること
(3)国内統一プロリーグとの緊密かつ強固な連携をはかっていること
(4)FIBA 「National Federation manual」に準拠した組織であること
(5)都道府県協会のガバナンス強化および法人化をめざすこと
(1)(2)は、バスケットボールに限らず、どんな組織・どんなスポーツであっても当然求められる。(3)は、次回送信する統一新リーグといかに連携をはかれるか。(4)については世界基準であるか。そして、(5)は都道府県単位でも自立しガバナンス強化をはかる。ということである。
実はミニバスケットボールの改正も
実は、ミニバスケットボールにおいても盲点があった。バスケットボールの取材をしている僕自身も恥ずかしながら、知ったのはこの記事を執筆する1か月前のことである。
ミニバスケットボールにおいて、ゾーンディフェンスはFIBAのミニバスケットボールの競技規定のなかでは禁止事項なのだ。
僕自身も、6月末日に都内でバスケットボールの勉強会に参加した時に初めて知った。
ミニバスケットボールというのは、11歳以下(日本では12歳以下)で行われるバスケットボールのことで、中学生以上のバスケットボールと比べルールが一部異なっている。
例をあげると、コートサイズも小さくなり、ボールは5号球を使用(通常は男子7号球、女子6号球)。スリーポイントシュートがなく、ショットクロックも30秒である。
ミニバスケットボールにおいて、当たり前のようにゾーンディフェンスをしていたという慣習は、世界基準で考えるとありえない話になるということだ。
この慣習が、現在の日本代表クラスのディフェンスレベルが向上しない要因とも言われている。
通常のマンツーマンディフェンスは、文字通り1対1で攻守の攻防をするのに対し、ゾーンディフェンスは、ある一定のゾーン(空間)をディフェンスするという発想なので、フィジカル的なところの消耗も全然違うということになる。
国際試合制裁解除となり、ユニバーシアード大会出場
色々な過程を乗り越えて、短い期間で『豪腕』はまとめきることになる。新リーグの振り分け記者会見時に川淵三郎氏は、む『短い期間だからこそできた』と述べるぐらい本当にスピード勝負となった。
そして6月19日に事実上『国際資格停止』は解除される。
制裁解除後初の国際試合となったのが、ユニバーシアード競技大会となった。
ユニバーシアード競技大会は、国際大学スポーツ連盟(FISU)が主催する学生を対象にした国際総合競技大会で、2年ごとに開催される。
今年の開催地は韓国光州。
お隣韓国が日本バスケットボール界、国際試合復帰の場となった。
学生とはいえ、東京五輪が開催される2020年の頃は20代後半となり、一番脂の乗り切った年齢で迎える世代である。
意外と知られていないユニバーシアード競技大会の出場資格だが、
(1) 大会が開催される年の1月1日現在で17歳以上28歳未満。
(2) なおかつ、大学または大学院に在学中、もしくは大会の前年に大学または大学院を卒業した人
である。日本代表は、プロ選手でも前年に大学・大学院を卒業した選手。つまりプロ入り1年目の選手。そして現役の学生で構成された。
女子は20年ぶりのベスト4。男子は予選リーグにて敗退
色々言われた中で迎えたユニバーシアード大会。女子は予選リーグ、スウェーデンに幸先よく勝利したものの、2試合目のロシア戦で敗れる。
しかし、メキシコに辛くも勝利し決勝トーナメントに進んだ。
この段階で20年ぶりのベスト8。
更に決勝トーナメントでオーストラリアに勝利し、20年ぶりのベスト4。
自国(日本)開催以外では初の快挙を達成した。
残念ながら、準決勝のアメリカ戦はダブルオーバータイム(各Q10分、4Q40分でも決着がつかない場合は、延長戦を設け、5分を1セット。この時は2回延長戦が設けられた)の末2点差で敗れ、結局3位決定戦でもロシアに敗れ4位に終わった。
一方男子は、予選リーグで敗退し、21位という結果で終わった。
『国際資格停止』後初の国際試合となったが、女子はそれなりの結果を残したものの、男子はまだまだ世界との差を感じる。
昨年この世代が、関西3都市(京都・大阪・神戸)でアメリカの大学とゲームをした際に、当時も率いていた池内泰明ヘッドコーチ(拓殖大学ヘッドコーチ)に2020年主力になるこの世代において一番強化しないといけないことは何ですかと取材すると、『とにかく運動量を上げること。』とおっしゃっていたことを思い出す。
欧米・アジアの強豪とフィジカル面では劣っているかもしれないが、それは野球・サッカーでも同じことである。野球においては、投手でいくとコントロール、変化球の制度。野手は巧みなバットコントロール。
サッカーでは、学習能力の高さや一芸があるが、バスケットボールは5人でゲームをコントロールするので、他競技と違うかもしれないが、相手より体格差で劣る分はいかに最後まで走るか、インサイドの選手の場合、ポストマンだけでなく、オフェンスに於いてもドライブを仕掛けていく。
アウトサイドの選手でも、リバウンドを取りに行く。
全員がサイズの差関係なく最後まで走りきる。
これに尽きると思う。
そして日本人らしいテクニックのあるバスケットボールとは何なのかを追求するいい機会ではないか。
【連載】バスケットボールジャーナリストが見た日本のバスケットボール界のリアル