国際試合制裁解除後初の男子日本国内開催
多くの日本バスケットボールファンはこの日を待ちわびた。それもそのはず、2014年11月にFIBAから制裁から下され、2015年6月に制裁解除され初の国際試合日本開催なのだから。
そして、日本代表も長谷川健志ヘッドコーチ体制2年目に入り、さらにはリオデジャネイロ五輪の予選も控え、より一層勝負の2015年夏を迎えるのである。
ここで改めて、今回選出された男子日本代表の顔ぶれを紹介しよう。
ヘッドコーチ 長谷川健志(はせがわ けんじ)
0 田臥 勇太(たぶせ ゆうた)PG(リンク栃木ブレックス)
2 富樫 勇樹(とがし ゆうき)PG
4 石崎 巧 (いしざき たくみ)PG(三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋)
5 満原 優樹(みつはら ゆうき)PF(日立サンロッカーズ東京)
6 比江島 慎(ひえじま まこと)PG(アイシンシーホース三河)
8 太田 敦也(おおた あつや)C(浜松東三河フェニックス)
10 橋本 竜馬(はしもと りょうま)PG(アイシンシーホース三河)
15 竹内 譲次(たけうち じょうじ)PF(日立サンロッカーズ東京)
16 松井 啓十郎(まついけいじゅうろう)SG(トヨタ自動車アルバルク東京)
17 荒尾 岳 (あらお がく)PF(千葉ジェッツ)
24 田中 大貴(たなか だいき)SG(トヨタ自動車アルバルク東京)
25 古川 孝敏(ふるかわ たかとし)SG(リンク栃木ブレックス)
34 小野 龍猛(おの りゅうも)SF(千葉ジェッツ)
42 広瀬 健太(ひろせ けんた)SF(日立サンロッカーズ東京)
51 田口 成浩(たぐち しげひろ)SG(秋田ノーザンハピネッツ)
(※PGはポイントガード、SGはシューティングガード、SFはスモールフォワード PFはパワーフォワード、Cはセンター。所属先は2015年8月20日現在)
長谷川健志ヘッドコーチの略歴(大)
長谷川健志ヘッドコーチと言えば、青山学院大学のヘッドコーチというイメージが強い。
1989年に青山学院大学男子バスケットボール部監督に就任後、全日本大学バスケットボール選手権を4回優勝に導き、学生バスケ界においては伝説的な存在である。
もちろん青山学院大学OBも多数プロで活躍している。 今回の代表においても4名が選出されている。
過去の代表選出においても、選手会長の岡田優介選手(千葉ジェッツ)をはじめ多くの選手を輩出している。
ゾーンディフェンスできっかけを掴んだ前半の振り返り
(前半終了 日本 32-25 チェコ)さて、注目の日本国内初戦だが、日本代表のスタート5はご覧の顔ぶれとなった。
4 石崎 巧
15 竹内 譲次
24 田中 大貴
25 古川 孝敏
34 小野 龍猛
第1ピリオド中盤から、日本代表は3-2ゾーンディフェンスを敷いていく。
(※3-2ゾーンディフェンスとは、センターサークルに近いところに3人ガード陣が並び、ゴールに近いところにフォワード・センター陣が2人並ぶシステムで、陣形を崩さずに相手からの攻撃に備える。)
これが功を奏し、松井啓十郎選手の2本のスリーポイント、チェコ代表のターンオーバーからの展開で田臥勇太選手のレイアップが決まり一気に引き離す。
第2ピリオドも引き続き、3-2ゾーンディフェンスを継続。
ディフェンスが機能しチェコ代表のトラベリング・ラインクロスを誘発し9点リードでこのピリオド残り5分55秒を迎える。
(※トラベリングはボールを保持したまま3歩以上歩いたり、止まった際に軸足を動かしてはならない。※ラインクロスはサイドライン、エンドラインを踏んだ時、ボールがラインを割るということになり相手チームに攻撃権が移る。)
そして、この選手の登場で一気に会場は沸く。
昨シーズンはアメリカNBAの下部リーグに所属し、イタリアリーグに移籍が決まった富樫勇樹選手が登場したのである。
『故障後初の実戦だったのでまだまだですが。』と試合後に語っていたが、さすがだと思う場面と、まだ調整段階と思う場面があった。
しかし、比江島慎選手と田中大貴選手との3人で演出したゴールはまさに役者そのものだった。
チェコ代表も終盤2-3ゾーンディフェンスを敷いてきたが、日本代表7点リードで後半に向かう。
ゾーンディフェンスで相手にペースを持たせてしまった後半の振り返り
(終了 日本 66-68 チェコ)後半に入っても、日本代表は3-2ゾーンディフェンスを敷く。
第3ピリオド終盤にかけて、チェコ代表は、日本代表のゾーンディフェンスを攻略し始める。
アウトサイドシュートもシューターの間合いで打てるようになり、スリーポイントを決めて3点差まで詰める。
ハーフタイムの時に長谷川ヘッドコーチから、『スリーポイントは打たせるな。全員でリバウンドを取りにいこう。』という指示が出ていた。
しかし、松井選手が『インサイドのカバーを見すぎた』と語る通り、少し動きが鈍くなったところをチェコ代表にスリーポイントシュートを決められ、残り2分31秒日本代表はタイムアウトを申告。
竹内譲次選手も『運動量が落ちたので上げないといけなかった』と悔やんだ。
ピリオド終盤、石崎巧選手の連続ゴールで4点リードとし、第4ピリオドへ。
第4ピリオドに入り、日本代表はマンツーマンディフェンスに戻して対応。
中盤に向けて竹内譲次選手らのゴールで7点差とし、チェコ代表はタイムアウト。
日本代表はその後、相手陣地からプレスをかけていき、プレッシャーをかけていくが、日本代表の足が止まり始める。
リバウンドにも行けなくなり、更に攻撃面でも、早い展開に持ち込めなくなる。
そして終盤、ついにチェコ代表4番ヴィオラール・トマーシュ選手のスリーポイントシュートにより勝ち越しを許す。
選手を入れ替えながらも再逆転を狙った日本代表だったが、小野龍猛選手のカウントワンショットも外れ、その後ディフェンスファールからフリースローを決められて2点差でチェコ代表に敗れた。
試合を振り返って
スコアとしては、ロースコアになった。両チームともアグレッシブにディフェンスをやったという結果になる。
しかし、試合後に日本代表選手から共通して出たコメントは、『リバウンドを全員で取りに行かないといけない。』
試合を通じて、リバウンドに意識を持っていて、オフェンスリバウンドを積極的に取りに行ったのはチェコ代表だった。
確かに、サイズとしてはチェコ代表に分がある。
でも長谷川ヘッドコーチは、日本代表のリバウンドを課題に挙げた。
さらにこう続ける。
『日本選手はゾーンディフェンスがうまくない。形はできるがディフェンスの状況判断をうまくできない。』選手自身が一番反省していたゾーンディフェンスの対応。『運動量の豊富さ、相手チームにスリーポイントを打たせないだけの動き。』がいかにできるかが勝敗を分けるのである。
田臥勇太選手、小野龍猛キャプテンからは『オリンピックに向けて、チーム全員が同じ方向に向いていかないと勝ち残っていけない。そして、もっと課題を見つけそれを克服していかないといけない。』と続けた。
長谷川ヘッドコーチが表現したいバスケットボールを日本代表選手が方向を定めて実践できるかである。
長谷川ヘッドコーチからは反省の言葉も
ただ長谷川ヘッドコーチは、親善試合だからよかったという前提で、『自分自身がチェンジオブディフェンスに関しては後手に回った。チェコ代表がゾーンディフェンスをやってくれたのは、ここまで相手チームがマンツーマンディフェンスしかやってこなかったので、実践できてよかった。』と語る。アップテンポでかつ、テンポを変えながらバスケットボールのゲームを展開させる。そして、1人フリーになり、スリーポイントシュートを決めていく。そのバスケットをこの日は逆にチェコ代表がやっていた。
チェコ代表の適応力が素晴らしかったと同時に、日本代表もそういうバスケットを目指すのであれば、この日のチェコ代表の気持ちの問題とテクニカルなことをしっかり学んでも良いのではないかなと思う。
【連載】バスケットボールジャーナリストが見た日本のバスケットボール界のリアル