すごい熱血先生みたいに
その男はずっとベンチ前を歩きまくっていた。という表現が適切だ。
その男の名前はハグリー・オーティス氏。
さすがに一国の代表ヘッドコーチともなると、若手の選手が集まるとなると話は別だが、選手も国のトップクラスが揃うわけで、今更細かい基本的なことを言っても仕方がない部分があるだろう。
と僕は思う。
国のトップクラスとなれば、テクニックもメンタルもトップクラスな訳で、あとは戦術面でどのように組立てるかというところになる。
ハグリー・オーティス氏の略歴
ハグリー・オーティスヘッドコーチの英語表記は(HUGHLEY, Otis)だ。
彼の略歴を調べると、NBAのキャリアが書いていた。
台湾のサイト、台灣籃球維基館で調べてみた。
コーチのキャリアをどこでスタートしたかは明確でないが、NBAサクラメントキングスでアシスタントコーチを2010-2011シーズンで担当していた。
NBA関連で繋げると、2014-2015シーズンを制したゴールデンステイト・ウォリアーズのムービーアナリストも2012年に担当していた。
中国に話を向けてみると、2002年中国CBA山東フレイミングブルズ(現山東ライオンズ)でヘッドコーチをしていた。
台湾においては、2013-2014シーズンより活躍されていて、台湾のプロリーグSBLで2チームコーチとしての実績があり、2014年は男子のチャイニーズ・タイペイ代表ヘッドコーチとなる。
2015年からは女子の代表ヘッドコーチとなり、今回親善試合のため、日本に来日していた。
日本対チャイニーズ・タイペイをチャイニーズ・タイペイ側から見ると
日本と対戦した3試合は、完敗だった。
ハグリーヘッドコーチが考えていたスタート5の選手が欠場していたという情報もあったが、日本のディフェンスに手も足も出なかったという印象が強い。
でも、アジア選手権2013のベスト4に入ったチームだから、実力差があるわけではない。
13日のゲームにおいては、日本代表のアウトサイドシュートがよく入ったということもあり得点差が出た。
対象的に、16日のゲームについては、リバウンドの数は互角だけれど、ミドルレンジでのシュート確率に差が出た。
16日のゲームだけを考えれば、日本代表の走るバスケットボールに翻弄された形になり、チャイニーズ・タイペイのバスケットボールはヘッドコーチの思う形では表現できなかったであろうと推測する。
そんな中、喜怒哀楽激しく選手を鼓舞し続けた
ハグリーヘッドコーチは、劣勢の中でもひとりベンチの前で選手に声をかけ続けた。
シュートが入った時は大きくジャンプして喜び、ヘッドコーチ自身が不満に思ったプレイに関しては、本気で床を蹴るような仕草を見せ悔しがった。
日本代表内海ヘッドコーチが、ずっと座って戦況を見つめ、時々選手に声を掛ける姿とは対照的な姿だった。
ゴール下で日本代表選手のプレイにカメラを向けていた視界に、いつも彼が入り込んでくるぐらいすごい存在感だった。
だからこそ、彼がベンチの椅子に座っている光景を見られなかったし、座っていたという記憶が無い。
試合前のアップから、手を叩いて気合を注入していた。
僕は、日本のプロバスケットボールチームを中心に取材をしてきたが、ヘッドコーチ自らが手を叩くのはあまり見たことがなかった。
(唯一、信州ブレイブウォリアーズ時代の河合竜児ヘッドコーチが試合前のアップの時にゴール下で鼓舞していたのは覚えている。)
ハグリーヘッドコーチの哲学を知りたい
熱血漢あふれる指導者というものは、僕の記憶が正しければ、哲学を持っていた。
例えば、野球で行くと、元楽天・阪神で長年監督をされてきた星野仙一氏。
タイプ的には違うかもしれないが、ミスタージャイアンツ長嶋茂雄氏。
テニスで行くと、かつてウィンブルドンテニスでベスト8にも進出した松岡修造氏。
今世界で活躍している錦織圭選手の幼少時代の師匠でもある。
この3人に共通していることは、言葉・声で選手の気持ちを高める哲学があると僕は思う。
3人共、ベースになっている部分は違うかもしれないが、いずれも名指導者だ。
この3人と同じ匂いがしたのは僕だけだろうか。
もし機会があれば台湾に行き、彼に指導の原点にもなっている哲学を知りたい。
これからアジア選手権が控えている。
日本代表同様に、チャイニーズ・タイペイの戦いぶりにも注目したい。
【連載】バスケットボールジャーナリストが見た日本のバスケットボール界のリアル